電算天使達(DENSAN Angels)
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1-2 僕の日常はどうしてこうなったのか


 自分、『久米 優磨(くるめ ゆうま)』は何故、
  こんな巨体のあるキモオタと生活することになったのには一年前の春にさかのぼる。

 当時の僕は、右も左もわからぬ横浜ゲームクリエイト専門学校ゲーム科一年生、すなわち新入生だった。

 そんな僕の目の前に現れたのは、あの『市田』と名乗る肉団子だった。

市田「頼む!一緒に住んでくれ~!」

 しつこく、色々な人に頭を下げてはそのセリフを言い男女問わずに、
  お願いし続けている肉団子『市田』の姿があった。

 当然、その順番は僕に回ってくる。その痛々しい行動を見かねてとりあえず、
  近くのファーストフード店に彼を誘った。

 彼の名前は『市田 直人(いちだ なおと)』。自分と同じ学校のデザイン科イラストコース一年生で年は同い年であった。
  横浜駅から歩いて三十分ところのマンションで一人暮らしをしていた。

 事情を聞くと、彼の実家は静岡で、大金持ちの次男坊らしく、
  親の反対を押し切ってこの学校に入学をしたらしい。

 しかし、入学の条件として『次のゴールデンウィークまでに同居人を見つけられなかった場合は、
  今すぐマンションを引き払い、専門学校をやめさせる』という止めさせる気満々の条件だった。

 そのうえに家賃や水道高熱費は向こうの実家から出してくれるという事をつけたして、
  同情の意味も込めて同居することを承諾した。

 その時の自分は今いる鎌倉の実家とはあまりうまくいっておらず、半分嫌気もさしていたので、
  半ば強引に家を出てきたのであった。

 しかし、その時の僕は彼が凄い人間でもある事に気が付かなかった。
  彼『市田 直人』はただの太った青年ではなかった。

 彼のペンネーム『豚丼直人』。彼の名を出せば同人界では名の知れた同人作家で通った。
  あらゆる同人即売会において彼の名を知る者は新参を除き知るものはいないほどの有名っぷりだった。

 そんな彼と同居することになったが早くも問題が起きる。

 なんと彼は、生活費の中で一番大切な食費の確保をするのを忘れていたのだ。

 今の今までは仕送りで何とかしていたらしいたらしいが、その仕送り分は家賃だったらしく、
  このままではマズイという事で、二人でバイトを探したが、
   結局バイトをすることになったのは自分だけになった。
    バイト経験ゼロでその体系と体力の無さに誰も市田を雇う人間はそう、いなかった。

 そんでもって、絵を描いている時に興奮して独り言を言う癖あるとなれば、
  普通は嫌になって同居を止めと思うが、それでも、それ以上のメリットが僕にはあった。

 入学して秋の事だった。実習という事で、ゲーム科の授業で何か作品を作る事になった。
  その時自分には密かな野望があった。

 自分は、この学校に入るためAO入試を受た僕は、
  内定取得の条件である学校主催のコンテストに作品を提出し参加することであった。

 その時に書いた企画書である『萌えキュン!エレクトロニックメイド』が最優秀賞に選ばれたのだ。
  その時から自分はこの作品を作ろうと思い密かに計画を練っていたのだ。

 この『萌えキュン!エレクトロニックメイド』とは音声アシスタントアプリに萌え要素を付け足して、
  萌えキャラと自然の会話ができるようにしメガネ型のウェラブル端末に表示させるだけの物なのだが、
   既存のシステムを改良するだけで、とてもクオリティーの高いアプリが出来ると、
    好評をいただき、それが理由で最優秀賞とったのであった。

 ようは、そのアプリを実際作るためには、メインである萌えキャラクターが必要であった。
  そこで同居人である、彼を引き抜こうといのが自分の考えであった。

 まぁ、それが転じて、後に大ヒットして同人サークルまで作る事にななんて、
  その時の自分は思ってもいなかった。

久米(まさか、あの時の僕は学校内で高評価もらう目的で作っていたのが、
     そこにとどまらず、今じゃ僕らは時の人か……実感ねーな)


 僕はそう思いながら自分の部屋に戻ったのであった。

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